遺伝子の変化に合わせたがん治療とは
ー 代表的な遺伝子の変化
遺伝子変異量(TMB)とは

遺伝子の変化に合わせたがん治療とは

遺伝子変異量(TMB)が多いとどうなるの?

遺伝子変異量(TMB)は、がん細胞のゲノムに生じた遺伝子の変化のおおよその量です。
もともと、私たちの体には遺伝子の変化を取り除く「修復システム」が備わっていますが、TMBが多いと、この修復システムの機能が低下し、がんが発生しやすくなると考えられています*1*2
また、TMBが多いがん細胞では、免疫システムによって異物と認識される変異タンパク質がたくさん作られていると考えられています*3
*1 Chalmers, Z.R. et al.: Analysis of 100,000 human cancer genomes reveals the landscape of tumor mutational burden. Genome Med. 9(1): 34, 2017.
*2 Campbell, B.B. et al.: Comprehensive Analysis of Hypermutation in Human Cancer. Cell. 171(5): 1042-1056, 2017.
*3 Galuppini, F. et al.: Tumor mutation burden: from comprehensive mutational screening to the clinic. Cancer Cell Int. 19: 209, 2019.
遺伝子変異量(TMB)は、DNA修復システムの機能低下と関連する(イメージ図)
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遺伝子変異量(TMB)は、どんながん患者さんで多いの?

TMBが多くなる要因として、皮膚がん(悪性黒色腫)の患者さんでは紫外線、非小細胞肺がんの患者さんではタバコ由来の化学物質に曝されることがあげられています*4*5。また、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-High)が確認された大腸がん、子宮内膜がんの患者さんでも、TMBが多いと報告されています*6
TMBは、皮膚がん(悪性黒色腫)、肺がん、膀胱がん、食道がん、大腸がん、子宮頸がん、頭頸部がん、胃がん、子宮がんなどさまざまながん患者さんで調べられています。量はそれぞれのがん患者さんで異なり、皮膚がん(悪性黒色腫)や肺がんの患者さんのようにTMBが多いこともあれば、白血病の患者さんのようにTMBが少ないこともあります*4*5
*4 Alexandrov, L.B. et al.: Signatures of mutational processes in human cancer. Nature. 500(7463): 415-421, 2013.
*5 Lawrence, M.S. et al.: Mutational heterogeneity in cancer and the search for new cancer-associated genes. Nature. 499(7457): 214-218, 2013.
*6 Vanderwalde, A. et al.: Microsatellite instability status determined by next-generation sequencing and compared with PD-L1 and tumor mutational burden in 11,348 patients. Cancer Med. 7(3): 746-756, 2018.

遺伝子変異量(TMB)が多い場合、治療の方針はどう変わるの?

2023年2月現在、遺伝子検査でTMBが高いと確認されれば、血液がん以外のどの臓器のがんでも効果を示す可能性があると期待される保険適用の薬剤があります。「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる薬剤で、体がもつ本来の免疫が働けるように促す作用があり、進行・再発の固形がん*7の治療として検討される場合があります。
*7 固形がんとは:血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)以外の、臓器や組織などでがん細胞がかたまりを作り、増殖するタイプのがん。

コラムCOLUMNエキスパートパネルとは

がん薬物療法、遺伝医学、遺伝カウンセリング、病理学などに関する専門的な知識をもった医師などの専門家が参加する会議で、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて、患者さんの治療方針を検討します。エキスパートパネルは、国が指定するがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。
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