遺伝子変異に合わせたがん治療とはがん遺伝子パネル検査と
これからのがん治療

遺伝子変異に合わせたがん治療とは
がんゲノム医療では、患者さん一人ひとりのがんの遺伝子変異に合わせた治療をめざしています。コンパニオン診断に続く「がん遺伝子パネル検査」の登場で、これからのがん治療がどう変わるのかをみていきます。

がん遺伝子パネル検査は、
一度に複数の遺伝子変異を解析する検査

抗がん剤の開発と同時に遺伝子検査の技術も進歩しています。2017年以降になると、遺伝子をひとつひとつ順番に調べる従来の検査とは違い、複数の遺伝子変異を一度の検査で調べることができる「がん遺伝子パネル検査」が登場しました。
がんの発生に関わる遺伝子の変異はひとつとは限らず、複数の遺伝子変異が関わっている場合があります。このような遺伝子を「がん関連遺伝子」とよびます。「がん遺伝子パネル検査」では、100種類以上のがん関連遺伝子の変異を一度に解析できるため、患者さんそれぞれのがんの特徴を詳しく知ることができます。
これまで複数の遺伝子変異を検査するには多くの時間が必要でしたが、技術の進歩により「次世代シークエンサー」とよばれる装置が登場したことで、短時間で一度に解析することが可能になりました。
「がん遺伝子パネル検査」と従来の遺伝子検査の違い
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COLUMN01がん免疫療法における「免疫チェックポイント阻害剤」も、発症した臓器に関係なく効果を示す場合があります。【マイクロサテライト不安定性(MSI-High)固形がんとは】

2018年に本庶佑博士がノーベル医学生理学賞を受賞したことで一躍脚光を浴びた「免疫チェックポイント阻害剤」は、新しいタイプの分子標的薬です。
がん細胞は免疫によって異物とみなされ排除されます。しかし、がん細胞が免疫の働きを邪魔すると、免疫は十分にがん細胞を排除できないことがあります。
「免疫チェックポイント阻害剤」は、がん細胞が免疫の邪魔をすることを防ぐ薬剤です。免疫を邪魔する因子を抑えて、体が持つ本来の免疫が働けるように促す効果があります。
免疫チェックポイント阻害剤の効果の一部を判断する材料となるのが、「マイクロサテライト不安定性」です。ゲノムには数個の文字からなる短い文字列が何度も繰り返す「マイクロサテライト」とよばれる部分があります。この部分では、文字列の繰り返しの「回数」に異常が起こりやすいのが特徴です。
マイクロサテライトの異常が、そのままがんの発生につながるわけではありませんが、最近になって、マイクロサテライトの異常の数と、免疫チェックポイント阻害剤の効果には関係があることがわかりました。そのため、マイクロサテライトの状態を調べて、免疫チェックポイント阻害剤の効果を調べる遺伝子検査が行われるようになっています。

COLUMN02さまざまな臓器のがんでまれに見つかる遺伝子変異のひとつに、「NTRK融合遺伝子」があります。

固形がんとよばれるタイプのがんや肉腫からまれに見つかる異常な遺伝子のひとつに、「NTRK融合遺伝子」があります。
「NTRK融合遺伝子」は正常なNTRK遺伝子の一部が他の遺伝子となんらかの原因で融合した異常な遺伝子です。正常なNTRK遺伝子からは、細胞に情報を伝えるTRKタンパクが作られますが、「NTRK融合遺伝子」からはTRK融合タンパクが作られます。TRK融合タンパクは、細胞のエネルギー源となるATP(アデノシン三リン酸)が結合するとがん細胞を増殖させる指令が出されたままとなり、がん細胞の増殖を招く原因になると考えられています。
「NTRK融合遺伝子」はまれではありますが、成人や小児のさまざまな固形がんで確認されています。
「NTRK融合遺伝子」から作られる異常なタンパク質を標的とする薬剤も開発されており、遺伝子検査で「NTRK融合遺伝子」が見つかれば、発症臓器に関係なくこの薬剤が効果を示す可能性があります。
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