NTRK遺伝子に変化が起こるとどうなるの?
TRKは、神経細胞の分化や維持に関わるタンパク質です*1*2。
TRKタンパク質を作り出すNTRK(エヌティーアールケー)遺伝子が、他の遺伝子と結合した状態で確認されることがあります*3*4。このように、ある遺伝子が他の遺伝子と結合してひとつの遺伝子のようにふるまう変化を「融合」といいます。
NTRK遺伝子と融合する相手の遺伝子はさまざまですが、他の遺伝子と融合したNTRK融合遺伝子からTRK融合タンパク質が作られると、必要のないときにも細胞が増殖し、がんが発生しやすくなると考えられています。
TRKタンパク質を作り出すNTRK(エヌティーアールケー)遺伝子が、他の遺伝子と結合した状態で確認されることがあります*3*4。このように、ある遺伝子が他の遺伝子と結合してひとつの遺伝子のようにふるまう変化を「融合」といいます。
NTRK遺伝子と融合する相手の遺伝子はさまざまですが、他の遺伝子と融合したNTRK融合遺伝子からTRK融合タンパク質が作られると、必要のないときにも細胞が増殖し、がんが発生しやすくなると考えられています。
*1 Amatu, A. et al.: NTRK gene fusions as novel targets of cancer therapy across multiple tumour types. ESMO Open. 1(2): e000023, 2016.
*2 Thiele, C.J. et al.: On Trk--the TrkB signal transduction pathway is an increasingly important target in cancer biology. Clin Cancer Res. 15(19): 5962-5967, 2009.
*3 Martin-Zanca, D. et al.: A human oncogene formed by the fusion of truncated tropomyosin and protein tyrosine kinase sequences. Nature. 319(6056): 743-748, 1986.
*4 Vaishnavi, A. et al.: TRKing down an old oncogene in a new era of targeted therapy. Cancer Discov. 5(1): 25-34, 2015.
*2 Thiele, C.J. et al.: On Trk--the TrkB signal transduction pathway is an increasingly important target in cancer biology. Clin Cancer Res. 15(19): 5962-5967, 2009.
*3 Martin-Zanca, D. et al.: A human oncogene formed by the fusion of truncated tropomyosin and protein tyrosine kinase sequences. Nature. 319(6056): 743-748, 1986.
*4 Vaishnavi, A. et al.: TRKing down an old oncogene in a new era of targeted therapy. Cancer Discov. 5(1): 25-34, 2015.
NTRK遺伝子の変化によって起こる細胞内の変化(イメージ図)
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NTRK遺伝子の変化は、どんな患者さんで確認されているの?
NTRK融合遺伝子は、大腸がんや肺がんなどさまざまな臓器のがん患者さんでまれに確認されています。また、唾液腺分泌がんや乳腺分泌がんなどの希少がんや、乳児型線維肉腫や中胚葉性腎腫などの小児がんの患者さんでは、高頻度で確認されます*4。
NTRKが融合する相手の遺伝子はさまざまで、がんによって異なることが知られています。唾液腺分泌がんや乳腺分泌がんの患者さんでは、「ETV6」という遺伝子との融合が90%以上で確認されます。一方、肺がんの患者さんでは8種類の融合遺伝子が確認されています*5。
NTRKが融合する相手の遺伝子はさまざまで、がんによって異なることが知られています。唾液腺分泌がんや乳腺分泌がんの患者さんでは、「ETV6」という遺伝子との融合が90%以上で確認されます。一方、肺がんの患者さんでは8種類の融合遺伝子が確認されています*5。
*5 Penault-Llorca,F. et al.: Testing algorithm for identification of patients with TRK fusion cancer. J Clin Pathol.72(7): 460-467, 2019.
NTRK融合遺伝子が確認されているがん
1)Orbach D, et al.: Eur J Cancer 57: 1-9, 2016 2)Knezevich SR, et al.: Nat Genet 18(2): 184-187, 1998 3)Rubin BP, et al.: Am J Pathol 153(5): 1451-58, 1998 4)Bourgeois JM, et al.: Am J Surg Pathol 24(7): 937-946, 2000 5)Del Castillo M, et al.: Am J Surg Pathol 39(11): 1458-67, 2015 6)Makretsov N, et al.: Genes Chromosomes Cancer 40(2): 152-7, 2004 7)Tognon C, et al.: Cancer Cell 2(5): 367-76, 2002 8)Laé M, et al.: Mod Pathol 22(2): 291-98, 2009 9)Skálová A, et al.: Am J Surg Pathol 40(1): 3-13, 2016 10)Bishop JA, et al.: Hum Pathol 44(10): 1982-1988, 2013 11)Knezevich SR, et al.: Cancer Res 58(22): 5046-48, 1998 12)Wu G, et al.: Nat Genet 46(5): 444-50, 2014 13)Prasad ML, et al.: Cancer 122(7): 1097-107, 2016 14)Wiesner T, et al.: Nat Commun 5: 3116 791-798, 2014 15)Musholt TJ, et al.: Surgery 128(6): 984-93, 2000 16)Leeman-Neil RJ, et al.: Cancer 120(6): 799-807, 2014 17)Chiang S, et al.: Am J Surg Pathol 42(6): 791-798, 2018 18)Ross JS, et al.: Oncologist 19(3): 235-42, 2014 19)Jones DT, et al.: Nat Genet 45(8): 927-932, 2013 20)Yamamoto H, et al.: Histopathology 69(1): 72-83, 2016 21)Stransky N, et al.: Nat Commun 5: 4846, 2014 22)Vaishnavi A, et al.: Nat Med 19(11): 1469-72, 2013 23)Shi E, et al.: J Transl Med 14(1): 339, 2016 24)Brenca M, et al.: J Pathol 238(4): 543-49, 2016 25)Kim J, et al.: PLoS One 9(3): e91940, 2014 26)Frattini V, et al.: Nat Genet 45(10): 1141-1149, 2013 27)Zheng Z, et al.: Nat Med 20(12): 1479-1484, 2014 28)Chen Y, et al.: J Hematol Oncol 11(1): 78, 2018 29)Ardini E, et al.: Mol Oncol 8(8): 1495-1507, 2014 30)Creancier L, et al.: Cancer Lett 365(1): 107-111, 2015 31)Zehir A, et al.: Nat Med 23(6): 703-713, 2017を元に作図
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NTRK遺伝子の変化が確認された場合、治療の方針はどう変わるの?
2023年2月現在、遺伝子検査でNTRK融合遺伝子が確認されれば、血液がん以外のどの臓器のがんでも効果を示す可能性があると期待される保険適用の薬剤があります*6。TRKタンパク質の働きを妨げる薬剤で、進行・再発の固形がん*7や希少がんの治療として検討される場合があります。
がんゲノム医療による検査や治療については、主治医、医療機関にてご相談ください。
がんゲノム医療による検査や治療については、主治医、医療機関にてご相談ください。
*6 日本癌治療学会/日本臨床腫瘍学会: 成人・小児進行固形がんにおける臓器横断的ゲノム診療のガイドライン 第3版2022年2月.
*7 固形がんとは:血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)以外の、臓器や組織などでがん細胞がかたまりを作り、増殖するタイプのがん。
*7 固形がんとは:血液がん(白血病、悪性リンパ腫など)以外の、臓器や組織などでがん細胞がかたまりを作り、増殖するタイプのがん。
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コラムCOLUMNエキスパートパネルとは
がん薬物療法、遺伝医学、遺伝カウンセリング、病理学などに関する専門的な知識をもった医師などの専門家が参加する会議で、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて、患者さんの治療方針を検討します。エキスパートパネルは、国が指定するがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。