遺伝子の変化に合わせたがん治療とは
ー 代表的な遺伝子の変化
BRCA遺伝子の変化とは

遺伝子の変化に合わせたがん治療とは

BRCA遺伝子に変化が起こるとどうなるの?

BRCA(ビーアールシーエー)タンパク質は、DNA(デオキシリボ核酸)に生じた変化を修復するタンパク質です。
BRCA1タンパク質またはBRCA2タンパク質を作り出す遺伝子のどちらか一方に変化が起こると、DNAに生じた変化をうまく修復できなくなり、がんが発生しやすくなると考えられています*1
*1 山下瞳ほか:HBOC関連がんの管理と治療.医学のあゆみvol.269 No.3:221-224, 2019.
BRCA遺伝子の変化によって起こるDNA修復システムの機能低下(イメージ図)
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BRCA遺伝子の変化は、どんな患者さんで確認されているの?

乳がんや卵巣がんの患者さんの約1割は遺伝性で、BRCA1またはBRCA2遺伝子のどちらかに変化が確認されることが多くあります*2。健康な人で、BRCA1またはBRCA2遺伝子に変化が確認される割合は、日本人でははっきりわかっていませんが、欧米では400~500人に1人といわれています*3。そのほかに、前立腺がんの患者さんの数%程度に、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変化が確認されるという報告があります*4*5
*2 厚生労働省研究班:遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)診療の手引き2017年版.
*3 GENEReviews. http://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK1247/(2023年3月1日アクセス)
*4 Kote-Jarai, Z. et al.: BRCA2 is a moderate penetrance gene contributing to young-onset prostate cancer: Implications for genetic testing in prostate cancer patients. Br J Cancer 105(8):1230-1234, 2011.
*5 Leongamornlert, D. et al: Germline BRCA1 mutations increase prostate cancer risk. Br J Cancer 106(10):1697-1701, 2012.

BRCA遺伝子の変化が確認された場合、治療の方針はどう変わるの?

2023年2月現在、乳がんと卵巣がん、前立腺がん、膵がんの患者さんには、BRCA遺伝子の変化に対応した保険適用の薬剤があります。DNAの修復に関わるタンパク質「PARP」の働きを妨げる薬剤で、BRCA1またはBRCA2遺伝子の変化を持つがん細胞を標的として破壊する作用があります。検査でBRCA1またはBRCA2遺伝子の変化が確認されれば効果を示す可能性があると期待されます*6
家族歴などから遺伝性の乳がんや卵巣がんが疑われる患者さんでは、治療の方針を決めるために、遺伝子検査を行いBRCA1またはBRCA2遺伝子の変化を調べることがあります*1*2
がんゲノム医療による検査や治療については、主治医、医療機関にてご相談ください。
*6 Sunada, S. et al.: Crosstalk of DNA double-strand break repair pathways in poly(ADP-ribose) polymerase inhibitor treatment of breast cancer susceptibility gene 1/2-mutated cancer.. Cancer Sci. 109(4): 893-899, 2018.

コラムCOLUMNエキスパートパネルとは

がん薬物療法、遺伝医学、遺伝カウンセリング、病理学などに関する専門的な知識をもった医師などの専門家が参加する会議で、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて、患者さんの治療方針を検討します。エキスパートパネルは、国が指定するがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。
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