ROS1遺伝子に変化が起こるとどうなるの?
ROS1(ロスワン)は、細胞の増殖に関わるタンパク質のひとつです。
ROS1タンパク質を作り出す遺伝子が、他の遺伝子と結合した状態で確認されることがあります*1*2。このように、ある遺伝子が他の遺伝子と結合してひとつの遺伝子のようにふるまう変化を「融合」といいます。
ROS1遺伝子と融合する相手の遺伝子はさまざまですが、他の遺伝子と融合したROS1融合遺伝子からROS1融合タンパク質が作られると、必要のないときにも細胞が増殖し、がんが発生しやすくなると考えられています。
ROS1タンパク質を作り出す遺伝子が、他の遺伝子と結合した状態で確認されることがあります*1*2。このように、ある遺伝子が他の遺伝子と結合してひとつの遺伝子のようにふるまう変化を「融合」といいます。
ROS1遺伝子と融合する相手の遺伝子はさまざまですが、他の遺伝子と融合したROS1融合遺伝子からROS1融合タンパク質が作られると、必要のないときにも細胞が増殖し、がんが発生しやすくなると考えられています。
*1 Charest, A. et al.: Fusion of FIG to the receptor tyrosine kinase ROS in a glioblastoma with an interstitial del(6)(q21q21). Genes Chromosomes Cancer. 37(1): 58-71, 2003.
*2 Rikova, K. et al.: Global survey of phosphotyrosine signaling identifies oncogenic kinases in lung cancer. Cell. 131(6): 1190-1203, 2007.
*2 Rikova, K. et al.: Global survey of phosphotyrosine signaling identifies oncogenic kinases in lung cancer. Cell. 131(6): 1190-1203, 2007.
ROS1遺伝子の変化によって起こる細胞内の変化(イメージ図)
ピンチで図を拡大する
ROS1遺伝子の変化は、どんな患者さんで確認されているの?
ROS1融合遺伝子は脳腫瘍(膠芽腫)*1や肺がん*2、胃がん*3、胆管がん*4、卵巣がん*5などの患者さんで確認されています。また、非小細胞肺がんにおいてROS1融合遺伝子が確認される頻度は低いものの、そのなかで若い患者さん、女性の患者さん、タバコを吸わない患者さんなどで確認されやすいことがわかってきました*6。似た特徴の患者さんでALK融合遺伝子が確認されることがありますが、ROS1融合遺伝子をもつ患者さんにはALK融合遺伝子が確認されないことがほとんどです*6。
*3 Lee, J. et al: Identification of ROS1 rearrangement in gastric adenocarcinoma. Cancer 119: 1627-1635, 2013.
*4 Lee, K.H. et al: Clinical and pathological significance of ROS1 expression in intrahepatic cholangiocarcinoma. BMC Cancer 15: 721, 2015.
*5 Birch, A.H. et al: Chromosome 3 anomalies investigated by genome wide SNP analysis of benign, low malignant potential and low grade ovarian serous tumours. PLoS One 6: e28250, 2011.
*6 日本肺癌学会: 肺癌患者におけるROS1融合遺伝子検査の手引き 第1版 2017年4月.
*4 Lee, K.H. et al: Clinical and pathological significance of ROS1 expression in intrahepatic cholangiocarcinoma. BMC Cancer 15: 721, 2015.
*5 Birch, A.H. et al: Chromosome 3 anomalies investigated by genome wide SNP analysis of benign, low malignant potential and low grade ovarian serous tumours. PLoS One 6: e28250, 2011.
*6 日本肺癌学会: 肺癌患者におけるROS1融合遺伝子検査の手引き 第1版 2017年4月.
ROS1遺伝子の変化が確認された場合、治療の方針はどう変わるの?
2023年2月現在、肺がんの患者さんには、ROS1融合遺伝子に対応した保険適用の薬剤があります。これらの薬剤はROS1タンパク質の働きを妨げる作用があり、検査でROS1融合遺伝子が確認されれば、効果を示す可能性があると期待されます*6。
がんゲノム医療による検査や治療については、主治医、医療機関にてご相談ください。
がんゲノム医療による検査や治療については、主治医、医療機関にてご相談ください。
ほかの代表的な遺伝子の変化についてはこちら
選択してください
細胞の情報伝達に関わる遺伝子の変化
そのほかの遺伝子の変化
コラムCOLUMNエキスパートパネルとは
がん薬物療法、遺伝医学、遺伝カウンセリング、病理学などに関する専門的な知識をもった医師などの専門家が参加する会議で、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて、患者さんの治療方針を検討します。エキスパートパネルは、国が指定するがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。