がんの原因と遺伝子遺伝するがん【遺伝性腫瘍について】

がんは遺伝子に起こる変化が原因で起こる病気です。多くの場合、遺伝する病気ではありませんが、場合によっては、がんに関わる遺伝子の変化が次の世代にも伝わることがあります。このページでは、「遺伝性腫瘍」とよばれる、遺伝するがんについてみていきます。
がんの原因と遺伝子

がんは遺伝するの?

ほとんどのがんは遺伝しませんが、がんになりやすい変化が受け継がれる場合があります。

多くのがんは生まれてから後に遺伝子に生じた変化が原因であり、次の世代に遺伝することはありません。ただし、生まれながらにしてがんに関わる遺伝子に変化があると、次の世代にその変化が受け継がれる、すなわち「遺伝する」可能性もあります。
細胞は「体細胞」と「生殖細胞」の二つに分けることができます。体細胞は筋肉や骨、神経や血液など体の多くの部分を占める細胞です。これらの細胞に含まれる遺伝子に、生まれた後で変化が生じたとしても、次の世代に受け継がれることはありません。これに対し、生殖細胞は男性では精子、女性では卵子になる細胞です。そのため、もし生殖細胞に含まれる遺伝子に変化がある場合には、次の世代に受け継がれる可能性があります。
遺伝性がんの発生
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遺伝するがんと、遺伝しないがんとの違い

ヒトの染色体のうち半分は父親から、半分は母親から受け継ぎます。もし、卵子、または精子がもつ遺伝子に変化があると、子どもはその変化を受け継ぐ可能性があります。
ただし、どちらか片方の親から変化を受け継いだとしても、すぐにがんになるわけではありません。片方の遺伝子が変化によって機能しなくても、もう片方の遺伝子が正常であれば、その機能を補ってくれます。しかし、もし何かの原因でもう片方の遺伝子にも変化が起こると、両方の遺伝子が正常に働くことができなくなり、がんになる確率が高くなると考えられます。
がん遺伝子の変化と遺伝性腫瘍
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遺伝性の乳がんについて

乳がんの約1割は遺伝性のがんといわれています。遺伝性の乳がんを発症した人では「BRCA1」、または「BRCA2」とよばれる遺伝子に変化が見つかることが多くあります。
この遺伝子からできるタンパク質はDNAに生じた傷を修復する働きがあります。そのため、この遺伝子がうまく働かなくなると、遺伝子の変化が取り除かれずに蓄積してしまい、がんを引き起こす原因になります。「BRCA1」、または「BRCA2」に変化がある人すべてががんを発症するわけではありませんが、変化がない人よりも、発症するリスクは高くなることがわかっています。
遺伝性のがんを引き起こす原因となる遺伝子としては他にも、「家族性大腸腺腫」の原因となるAPCや、「網膜芽細胞腫」を引き起こすRBなどが知られています。遺伝性がんであるかどうかは、遺伝子検査によって判断する必要があります。

がんの遺伝子の変化が遺伝性であるかを調べるには

がん遺伝子パネル検査で調べるのは、がんの組織や細胞、血液から取り出したDNAなどです。もし遺伝子の変化が見つかったとしても、それが親から受け継いだ遺伝性のものであるか、または生まれてから起きた変化であるかは、がん遺伝子パネル検査の結果だけからは区別をすることができません。
遺伝性の変化かどうかを調べるには、がんの細胞以外の正常な細胞から取り出したDNAも一緒に検査する必要があります。もし遺伝性の変化であれば、正常な細胞の遺伝子にも変化が見つかります。通常はがん組織のまわりにある正常な細胞や血液中の細胞を検査して、遺伝性の変化かどうかを判断します。
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