遺伝子の変化に合わせたがん治療とは
ー 代表的な遺伝子の変化
RAS遺伝子の変化とは

遺伝子の変化に合わせたがん治療とは

RAS遺伝子に変化が起こるとどうなるの?

RAS(ラス)は、細胞の増殖などに関わるタンパク質のひとつです。
RASタンパク質には、「KRAS(ケーラス)」、「NRAS(エヌラス)」、「HRAS(エイチラス)」の3種類があります。3種類のRASタンパク質を作り出す遺伝子のどれかひとつに変化が起こると、通常とは異なる働きを持つRASタンパク質が作られ、必要のないときにも細胞が増殖し、がんが発生しやすくなると考えられています。
RAS遺伝子の変化によって起こる細胞内の変化(イメージ図)
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RAS遺伝子の変化は、どんな患者さんで確認されているの?

RAS遺伝子の変化は、さまざまながん患者さんで確認されています。KRAS遺伝子の変化は膵がんの患者さんの95%以上で確認され、大腸がん、肺がん、多発性骨髄腫、子宮体がんなどの患者さんでも確認されています*1。NRAS遺伝子の変化が確認されているのは、皮膚がん(悪性黒色腫)や多発性骨髄腫の患者さんです。HRAS遺伝子の変化が確認されることはまれですが、膀胱がんや甲状腺がんなどの患者さんで確認されています。
*1 Cox, A.D. et al.: Drugging the undruggable RAS: Mission possible? Nat Rev Drug Discov. 13(11): 828-851, 2014.

RAS遺伝子の変化が確認された場合、治療の方針はどう変わるの?

異常なRASタンパク質の働きを妨げる薬剤の開発が進められていますが、2023年2月現在、RAS遺伝子の変化が確認されたがんに対して国内で承認されている薬剤はまだありません*2*3
ただし、RAS遺伝子の変化があると、EGFRタンパク質の働きを妨げる薬剤の効果が得られないことがあります。大腸がんでは、これらの薬剤の使用を検討する際に、RAS遺伝子の変化を調べることが推奨されています*4
がんゲノム医療による検査については、主治医、医療機関にてご相談ください。
*2 林 秀幸: KRAS/BRAF/MAPK依存性悪性腫瘍の特徴と治療戦略. 医学のあゆみ.vol.269: No.3: 193-197, 2019.
*3 Ostrem, J.M. et al.: K-Ras(G12C) inhibitors allosterically control GTP affinity and effector interactions. Nature. 503(7477): 548-551, 2013.
*4 日本臨床腫瘍学会: 大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス 第2版 2014年4月.

コラムCOLUMNエキスパートパネルとは

がん薬物療法、遺伝医学、遺伝カウンセリング、病理学などに関する専門的な知識をもった医師などの専門家が参加する会議で、がん遺伝子パネル検査の結果に基づいて、患者さんの治療方針を検討します。エキスパートパネルは、国が指定するがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。
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