がんゲノム医療について
- Q1 ゲノム医療とはなんですか? 開く 閉じる
- 一人ひとりの「ゲノム」の違いに合わせて、病気の診断や治療を行うのが「ゲノム医療」です。「がんゲノム医療」では、がん患者さんによって異なるがんの遺伝子の変化を「がん遺伝子パネル検査」とよばれる検査などで調べ、その情報にもとづいて診断や治療を行います。これまでのように体の“どこに”がんができたかで治療を考えるのではなく、がんの原因となる遺伝子の変化に着目します。がん治療の選択肢が広がると期待されます。
- Q2 ゲノムとはなんですか? 開く 閉じる
- 「ゲノム」とは、一人ひとりが持っているすべての遺伝情報のことです。「遺伝子」とはゲノムの中でも、タンパク質の設計図となる情報が書き込まれている部分のことです。遺伝子を設計図とすると、タンパク質はその設計図によって作られる「材料」や「道具」ということができます。正しい時期に正しい場所で、正しいタンパク質が作られることで、私たちの体は成り立っています。
- Q3 がんゲノム医療はどこで受けられるのですか? 開く 閉じる
- がんゲノム医療は、厚生労働省に指定された、がんゲノム医療に必要とされる設備や体制を備えた医療機関で行われます。「がんゲノム医療中核拠点病院」、「がんゲノム医療拠点病院」、それらと連携する「がんゲノム医療連携病院」があり、がんゲノム医療を受けられる体制が整えられています。これらの病院では、がん遺伝子検査パネルの実施や、検査結果にもとづいた検討・治療が行われます。
- Q4 なぜ日本でも、がんゲノム医療がはじまったのですか? 開く 閉じる
- わが国では、がんは日本人の死因の多くを占める病気であり、国民の生命と健康にとって重大な問題であるとして、2007年に「がん対策基本法」が施行され、さまざまながん対策が進められてきています。がんゲノム医療は、2018年に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」で、患者本位のがん医療を実現するための施策として推進されることになり、提供体制の整備が進められています。
がん遺伝子パネル検査について
- Q1 がん遺伝子パネル検査とはなんですか? 開く 閉じる
- がん遺伝子パネル検査は、がんの発生に関わる複数のがんの遺伝子の変化を一度に調べる検査です。検査には、患者さんのがん組織を手術などで取り出して調べる検査と、採血をして調べる検査があります。検査によって遺伝子に変化が見つかれば、その変化に対し効果が期待できる治療法や薬剤の情報が得られることがあり、治療方法の選択に役立つ場合があります。
- Q2 検査にはどのくらいの時間がかかりますか? 開く 閉じる
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がん遺伝子パネル検査には、取り出したがん組織を調べる検査と採血した血液を調べる検査の2種類があり、通常、血液を調べる検査の方が検査にかかる時間は短くなります。がん組織を使う場合、手術で切除したり検査目的で採取したがん組織を保存していたものを使うため、ほとんどの場合、あらためて組織の採取に時間をとることはありません*が、組織の場合、検査に適した検体に加工する必要があるため、血液を調べる検査に比べて検査機関に送るまでに時間がかかります。採取した組織や血液を専門の検査機関に送り、結果が医療機関に届けられるまでの期間については、詳しくは主治医にお問い合わせください。
* 保存していた組織の状態がよくない場合や検査に必要な量が十分にない場合には、あらためて生検を行ってがん組織を採取することもあります。
- Q3 がん遺伝子パネル検査を受ければ、治療法が見つかりますか? 開く 閉じる
- 「がん遺伝子パネル検査」では、患者さんのがんにどのような遺伝子の変化が起こっているのかを包括的に調べますが、必ず遺伝子の変化が見つかるわけではありません。また、遺伝子の変化が見つかっても、効果が期待できる薬剤の情報が得られない場合もあります。さらに、国内では承認されていないなどの理由により、実際に治療を受けることが難しく、従来の治療を選択することになる場合もあります。その場合は従来の治療を行うことになります。治療方法の選択については主治医とご相談ください。
- Q4 治療法が見つからないかもしれないのに、がんゲノム検査を受ける必要があるのですか? 開く 閉じる
- 現時点では候補となる薬剤・治験等が見つからなかったものの、今後候補となる薬剤・治験等があらわれる可能性があるため、がんゲノム検査の結果は、最新の治験情報提供として、継続的な患者さんへのサポートにつながると考えられています。
- Q5 がん遺伝子パネル検査で、がん以外の遺伝子のこともわかるのですか? 開く 閉じる
- 「がん遺伝子パネル検査」では、がんの発症に関わると考えられる遺伝子のみを調べます。検査対象となる遺伝子は、がん遺伝子パネル検査の種類によって異なります。
- Q6 検査の結果から、子どもなどへの遺伝の可能性についてもわかるのですか? 開く 閉じる
- がん遺伝子パネル検査によって、遺伝性のがんについての情報が得られる場合があります。がん細胞だけでなく、正常な細胞でもその遺伝子の変化が見つかる場合には、遺伝によってお子さんなどに受け継がれる可能性があります。ただし、遺伝性のがんの情報など、ご自身の病気に関すること以外の結果は、ご希望がなければ知らされることはありません。詳しくは、がんゲノム医療実施病院の医師や遺伝カウンセラーにご相談ください。
保険や費用について
- Q1 がん遺伝子パネル検査を受けるにはいくらかかりますか? 開く 閉じる
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2019年6月より、いくつかのがん遺伝子パネル検査が健康保険の適用となりました。
健康保険が適用される場合、検査のみの費用は56万円ですが、ご自身の医療費の負担割合によって異なります
(負担割合が1割の場合は5万6千円、2割の場合は11万2千円、3割の場合は16万8千円です)。
【ご留意いただきたいこと】
- 検査費用以外に、診察料や検体の準備にかかわる費用などが別途必要になります。
- この検査を受けられる施設は厚生労働省によって指定されているため、転院が必要な場合には、別途紹介料がかかる場合があります(この検査を受けられる施設につきましては「がんゲノム医療の取り組み」をご確認ください)。
- 「高額療養費制度」を利用することで、医療費の自己負担の軽減が可能な場合があります。中外製薬が運営しているウェブサイト「がんWith」では、「病院でかかるお金」や「高額療養費の手続き」についてご紹介しています。ぜひご覧ください。
その他
- Q1 がんゲノム医療で行うがん遺伝子パネル検査と、インターネットなどで申込める民間の遺伝子検査とは、なにが違うのですか? 開く 閉じる
- がんゲノム医療で行うがん遺伝子パネル検査は、がん細胞の遺伝子の状態を調べる検査です。これに対し、民間の遺伝子検査サービスや市販の遺伝子キットで調べるのは、正常な細胞の遺伝子です。そのため市販の検査キットなどでは、がんの診断・治療に関わるがんの遺伝子の状態を調べることはできません。
- Q2 「エキスパートパネル」とはなんですか? 開く 閉じる
- 「がん遺伝子パネル検査」で得られた結果は、主治医だけではなく、がん薬物療法に関する専門的な知識をもった医師、遺伝医学に関する専門的な知識をもった医師や遺伝カウンセリング技術をもった医療関係者、病理学に関する専門的な知識をもった医師など、専門家が参加する会議で詳しく分析されます。この仕組みを「エキスパートパネル」といい、全国各地のがんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院で開催されます。そこで作成される報告書をもとに、治療法を選択します。
- Q3 個人の遺伝子の情報は、どのように守られるのでしょうか? 開く 閉じる
- 患者さんのがん組織を検査機関に送る際の情報や、検査の結果得られたデータなどは、患者さん個人を特定できない形で、日本の個人情報保護法に則り、適切に取り扱われます。
- Q4 がんの遺伝子の情報をC-CATに提供する場合があると聞きました。C-CATとはなんですか? 開く 閉じる
- がんゲノム医療の新たな拠点として設立されたのが「がんゲノム情報管理センター(C-CAT:Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics)」です。このセンターは「国立がん研究センター」の中にあります。がん遺伝子パネル検査を受ける前に、結果や治療の情報をC-CATへ提供することに同意すると、個人が特定できない形でそれらの情報がC-CATに登録されます。C-CATでは全国から集められたがんゲノム医療の情報を保管し、新薬や新しい治療法の開発のために適切に活用します。情報を集めるだけではなく、薬剤に対する効果や予後などの臨床情報を、がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院に提供するなどして、より質の高いがんゲノム医療を、より多くの患者さんに届けることを目的としています。